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涙が止まらなかった。
最後の文章を読み切るまで、何度も涙を拭った。
梨々花との日々は、今でも鮮明に思い出せる。
そのくらい、私にとっても彼女と出会えた数ヶ月は本当に大切なものだった。
「梨々花……っ」
私は彼女がたとえ違った名前でも、高校生じゃなくて工場で働いている人だとしても、絶対に嫌いになったりしないのに。
だって、私は梨々花のそんな「嘘」に何度も何度も救われてきたんだ。
カフェの店内で話したこと、月が登った真夜中の公園で語ったたくさんのこと。
あのときは友達関係も、恋も、将来のことも、すべてがうまくいっていなかった。
あなたが嘘といった「梨々花」という存在に、本当に救われてきたんだ。
だから、いつかあなたに話したい。
今ではこんなふうに気軽に集まれる友達がいるってことを。
「……愛美?どうしたの?」
「青葉、くん」
「何かあった?」
「……ううん、何もないよ!それより今日は来てくれてありがとね」
「当たり前だよ。“彼女”のご要望とあらば、ね」
そして、あなたに話していた彼が、今では私の彼氏だってことも。
私はいつまでも待ってる。
一番壁際のひとり席に、再びあなたが座る──……その日を。
【完】