あれから修学旅行中は神崎くんのことを避け始めた。
周りの女子も満足のようで、私に優しく話しかけてくる。
あまりの変わりように気持ち悪かった。
修学旅行から一ヶ月経って、私と神崎くんの関係はもうないに等しい。
クラスは平和で何も問題はない。
このまま平和に終わろう。
***
ある昼休み、職員室から教室に戻る途中神崎くんとすれ違う。
私はいつものように俯いて足早に彼の横を通り過ぎる。
しかし、今日はいつものように上手くいかず神崎くんに乱暴に腕を掴まれた。
「……なんですか?」
「遠藤さ、俺のこと避けすぎだと思う」
悲しそうな声、表情は見えないけどきっと声と同じように悲しそうな目をしているんだろう。
「ごめん、あまり関わりたくないの」
「どうして?」
彼の悲痛な声に思わず、胸が締め付けられる。
「……嫌いなの」
あぁ、思ってることと逆のことを言うのって、どうして苦しいんだろう。
これが彼のためだと分かっても胸が痛むのが止まらない。
そういうと神崎くんの手の力が抜けていく。
私はそのまま腕を抜いて早歩きでその場から去る。
どうして? 私は彼のことが好きなのに、彼には私じゃない私の妹だと思って接している。
そんなの、ひどいよ。
***
「ねぇ遠藤、なんで避けんの?」
「だから嫌いなんだってば」
あれから何かと2人きりになれるタイミングを作っては聞いてくる。
今回も私がみんなのノートを職員室に運ぶのを手伝ってくれたし、一体どうしたら離れてくれるのよ。
「理由がないと納得できない」
確かに、理由がないのは失礼か。伝わってほしいと願いながら遠回しにいう。
「修学旅行の夜でも思い出したら」
「なんかあったっけ」
「夜に会って話したでしょ」
「は、なかったろそんなの」
彼を思わず見ると、戸惑っていて嘘をついているように見えない。
予期していなかった返答に私も戸惑う。
何言ってんの? あの時あったでしょ、忘れたなんて言わないでよね。
「いや、ベンチで座って話してたでしょ」
「……ベンチ?」
彼の声のトーンが急に低くなる。
彼は天井をしばらく見上げてから独り言のように呟き始める。
「いやだってあれは奈緒で、でも修学旅行の話もしたし、それにクラスの話も。でも奈緒は……」
彼は私を見ると、真剣な眼差しで「夢でしょ」という。
私はその様子になんだかイライラして思わず声を上げていた。
「夜中の2:00に会ったでしょ。あんまり言いたくなかったけど、神崎くん私のこと奈緒って呼んだんだよ。私のこと奈緒の代わりとでも思ってるんでしょ。そんなの私が辛いでしょ。もう嫌なの私は莉緒なの! 奈緒は死んだでしょ!」
そう言って私は駆け出した。後ろを振り返らずにそのまま走っていく。
教室には戻らずトイレに駆け込んだ。
神崎くんなんて知らない。
私のことを奈緒って呼んだくせに、今更夢って言うなんてひどい。
私は奈緒じゃない、とぼけるなんてひどい。
もう、いやだよ……
自然と涙が溢れてきて静かに涙を拭い続けた。
周りの女子も満足のようで、私に優しく話しかけてくる。
あまりの変わりように気持ち悪かった。
修学旅行から一ヶ月経って、私と神崎くんの関係はもうないに等しい。
クラスは平和で何も問題はない。
このまま平和に終わろう。
***
ある昼休み、職員室から教室に戻る途中神崎くんとすれ違う。
私はいつものように俯いて足早に彼の横を通り過ぎる。
しかし、今日はいつものように上手くいかず神崎くんに乱暴に腕を掴まれた。
「……なんですか?」
「遠藤さ、俺のこと避けすぎだと思う」
悲しそうな声、表情は見えないけどきっと声と同じように悲しそうな目をしているんだろう。
「ごめん、あまり関わりたくないの」
「どうして?」
彼の悲痛な声に思わず、胸が締め付けられる。
「……嫌いなの」
あぁ、思ってることと逆のことを言うのって、どうして苦しいんだろう。
これが彼のためだと分かっても胸が痛むのが止まらない。
そういうと神崎くんの手の力が抜けていく。
私はそのまま腕を抜いて早歩きでその場から去る。
どうして? 私は彼のことが好きなのに、彼には私じゃない私の妹だと思って接している。
そんなの、ひどいよ。
***
「ねぇ遠藤、なんで避けんの?」
「だから嫌いなんだってば」
あれから何かと2人きりになれるタイミングを作っては聞いてくる。
今回も私がみんなのノートを職員室に運ぶのを手伝ってくれたし、一体どうしたら離れてくれるのよ。
「理由がないと納得できない」
確かに、理由がないのは失礼か。伝わってほしいと願いながら遠回しにいう。
「修学旅行の夜でも思い出したら」
「なんかあったっけ」
「夜に会って話したでしょ」
「は、なかったろそんなの」
彼を思わず見ると、戸惑っていて嘘をついているように見えない。
予期していなかった返答に私も戸惑う。
何言ってんの? あの時あったでしょ、忘れたなんて言わないでよね。
「いや、ベンチで座って話してたでしょ」
「……ベンチ?」
彼の声のトーンが急に低くなる。
彼は天井をしばらく見上げてから独り言のように呟き始める。
「いやだってあれは奈緒で、でも修学旅行の話もしたし、それにクラスの話も。でも奈緒は……」
彼は私を見ると、真剣な眼差しで「夢でしょ」という。
私はその様子になんだかイライラして思わず声を上げていた。
「夜中の2:00に会ったでしょ。あんまり言いたくなかったけど、神崎くん私のこと奈緒って呼んだんだよ。私のこと奈緒の代わりとでも思ってるんでしょ。そんなの私が辛いでしょ。もう嫌なの私は莉緒なの! 奈緒は死んだでしょ!」
そう言って私は駆け出した。後ろを振り返らずにそのまま走っていく。
教室には戻らずトイレに駆け込んだ。
神崎くんなんて知らない。
私のことを奈緒って呼んだくせに、今更夢って言うなんてひどい。
私は奈緒じゃない、とぼけるなんてひどい。
もう、いやだよ……
自然と涙が溢れてきて静かに涙を拭い続けた。