これは一軍の女子が教えてくれた話。
 班行動中、紛れもない事実を私に教えてくれた。

 神崎くんには死んでしまった大切な恋人がいる。

 しかも一年前の話らしい。
 だからクラスの女子は神崎くんに気を遣い、見ているだけにしたという。
 それなのに私は彼の気を知らずに話しているのが気に触るらしい。
 
 そして肝心な話。

 彼の死んでしまった恋人は、私の双子の妹だった。
 妹は去年、交通事故で亡くなった。
 一卵性の双子で、本当にそっくりだった。
 
 私の名前は「遠藤莉緒」
 妹の名前は「遠藤奈緒」

 最初、私が話しかけたときに神崎くんは私を見ないようにしていた。

 そして妹と違う名前で私を呼んだ。

 それはいつしか妹と共通の苗字で呼ぶようになり、最後には私のことを奈緒と呼んだ。
 
 彼には私が妹に見えている。死んでしまった妹と瓜二つだから。
 彼が私のいいところを言ってくれたけど、全部私じゃない。
 私のことを知っている、それは莉緒ではなく奈緒のことを知っているという意味だ。

 妹に恋人がいること、知らなかったな。

 私は神崎くんから離れた方がいい、その方が彼のためでもある。
 妹が死んだ現実をちゃんと受け止めてもらわないといけない。

 だから私は、もう神崎くんと必要以上関わらないことにした。

 これが、彼のためなんだ。