どうしよう、トイレに行きたい……
 布団の中でスマホの時刻を調べる。深夜の2:00……
 
 1人でトイレに行くの怖いなぁ、しかも初めての旅館だし迷子になったらやばいよぉ……
 でも、周りに友達がいる中漏らすのより、怖いのを我慢する方がマシ!

 1人で物音を立てないように静かに部屋から出る。

 今日は修学旅行なのに、あんまり楽しめなかったなぁ。
 なんというか、班の女子の当たりが強い気がする。

 私は最近クラスで人気の神崎くんと仲良くさせてもらってる。
 きっと神崎くんのファンからのあたりが1番強い。神崎くんはみんなのもの、そう言って見る専門の子が多いみたい。

 だけど私は教室の席が近いこともあり、よくおしゃべりをしている。
 それが周りの子達にとって気に食わないようだ。

 私みたいな陰キャが彼と仲良くするのは変だよね、女子たちの当たりが強いのは当たり前か……
 
 ***
 
 なんとかトイレについて用を済ましてから再び暗い廊下を歩く。

 足元が月の光に照らされていることに気がつく。
 ふと窓の外を見ると今日は満月だった。

 月が綺麗だ……そう思いふと神崎くんの顔が浮かぶ。
 神崎くんには好きな子がいるのだろうか。

「遠藤?」

 その声に反応してゆっくり視線を声の方に向ける。
 今考えていた人、そこには神崎くんがいた。

「神崎くん!」
「マジで遠藤なの?」
「うん、遠藤だよ!」

 彼は月の光に照らされながらいつもより嬉しそうに微笑んでいる。