君が長い髪をかきあげる仕種に
僕は女を感じた

小春日和の真昼の匂いを漂わせ
春を待ちきれずに飛び出してきた蝶よ

君が髪を切ったのは何故だったのか

君が貸してくれた鉛筆を滑らせ
君の体温を僕は抱き締めていた
そしてポケットに忍ばせた

君の机にイニシャルの落書きを見つけ
僕のと同じだと知ったとき
僕は優しくなった

君からの葉書が舞い込んだ夏の日
『書中お見舞い申し上げます』の文字に
僕の囚われの日々が始まった

僕の卒業アルバムに寄せ書きを拒んだ君
『あなたとは永遠の別れじゃないのよ』とうつむいた顔に
いつも笑みを湛えた唇は歪んでいた

僕は最後まで
『好き』と言えなかった


          十七才の晩秋