「男子」「女子」。色で分けると「青」と「赤」。そんな見えない常識にどれだけ苦しめられてきただろう。

 幼稚園に入って、名前が書けるようになったとき。「わかもりみどり」には間違いなく青緑の色がついていた。
 それを常識は赤く塗り潰す。
 だって女の子だから。
 文字の色に初めて違和感を覚えたのはそんな体験だった。

 小学生になっておばあちゃんが買ってくれたピンクのランドセルを使うようになった。多様性の時代で色々な色があるけど、やはり女の子は暖色系が多かったようだ。クラスに1人だけ緑色のランドセルを持っている女の子がいて、何度も私のランドセルと間違えてしまったのが懐かしい。

 中学生になると、スカーフの赤が私を苦しめる。私の中学校はセーラー服のスカーフが学年ごと「赤」「紺」「緑」とわかれていて、私は赤の学年になってしまった。お姉ちゃんは朱里(あかり)のくせに緑色なのに、私は緑色。何度スカーフを取り違えたことだろうか。

 高校生になった今、色の呪縛から解き放たれるのを感じている。もう男女別に名前が色分けされることもない。持ち物の色がなんとなく決められることもない。何より反対色の「赤」から解放される。今年の春はいつになく開放的で自由な心地がした。