「で、でもあの抱き合っている画像は――」
「ああ、あれは白浜くんが文化祭の準備で頑張りすぎて倒れちゃった時の写真ね。上手く撮るものだわ」
アユ先生が眉間にシワを寄せて腕を組む。
「……白浜くん、また倒れちゃったんですか⁉︎」
「ええ。幸い、私がすぐに車で病院に連れて行ったし、大したことなかったみたいだけど――あの子、他の人には内緒にしてほしいって言ってたけど、実は生まれつき体がそんなに強くないみたいなの」
「えっ」
白浜くんの体が?
そうだったの?
白浜くんって生まれつき体が弱かったんだ。
私は白浜くんと初めて会った時のことを思い出した。
あの時は単にお腹が空いて倒れているだけだと思ってた。
だけどよく考えたら貧血だって言ってた気もする。薬があるとも。
二人でお母さんの病院に行った時も妙に落ち着いてた。
あれは白浜くんがしっかりしてるからだと思っていたけど、ひょっとしたら小さいころから体が弱かったから病院に行くのに慣れているからだったのかもしれない。
じゃあもしかして、最近顔色があまり良くなかったのも――。
私は下を向き、ぎゅっとこぶしを握り締めた。
「……それで私にも内緒にしてたんですね」
私が言うと、アユ先生は真剣な顔でうなずいた。
「ああ、あなたには特に心配かけたくなかったみたい」
そっか。そうだったんだ。
お腹の中に、何かがストンと落ちたような気がした。
「教えてくれてありがとうございました」
私はペコリと頭を下げて体育館に戻った。
白浜くん、そうだったんだ。
「……バカ。何で黙ってたのよ」
私は小さい声で嚙みしめるようにつぶやいた。
体が弱いくらいで私が幻滅するとでも思った?
完璧生徒会長以外の面を見せるのは嫌だと思った?
残念。私は今さら何があってももうとっくの昔に白浜くんのことが好きなんだよ。
……いや、馬鹿は私だ。
白浜くんを信じてあげられなかった。
白浜くんはあんなにも頑張っていたのに。