日が落ちてきて、肌寒い風が吹いてきた。

 そろそろ文化祭も終盤。閉会式の時間だ。

 早く新聞部の片付けをして閉会式を見ないと。

 私が廊下を急いでいると、急に誰かから呼び止められた。

「――五十鈴さん、ちょっといいかしら?」

 顔を上げると、そこに居たのはアユ先生だった。

「アユ先生」

 どうしてアユ先生がここに?

 私が思わず後ずさりをすると、アユ先生はニッコリと笑う。

「五十鈴さん、今いいかしら。そこの空き教室で少し話さない?」

 ギクリと心臓が鳴る。

 私はゴクリとつばを飲みこんでうなずいた。

「はい」

 私たち二人は、空き教室で向かいあって座った。

 アユ先生、何だろ。

 もしかして「港人は私のものだから近づかないで!」……ってことだろうか。

 私がもんもんと考えていると、アユ先生がゆっくりと口を開いた。

「今日あなたを呼びとめたのは、例の記事のことで、あなたと少しお話したいなって思ったからよ」

「は、はい」

 私は背筋をピンと伸ばした。

 き……来たっ。

 私がドキドキしながらアユ先生を見つめていると、アユ先生は小さくため息をついた。

「どうも勘違いしているみたいだけど、私と白浜くんはそういう関係じゃないの」

 困ったように首を横に振るアユ先生。

「で、でも」

 私はぐっと唇をかみ締め、思い切って聞いてみた。

「私、見ちゃったんです。アユ先生と白夜くんが二人で会って『今日の放課後もよろしく』って言っているところ」

 アユ先生は一瞬キョトンとしたあとで、小さく笑った。

「ああ。聞かれていたのね。それはね……」

 それは?

 私が緊張していると、アユ先生はこんなことを言い出した。

「詳しいことは言えないけれど文化祭の閉会式の演出がらみで相談を受けていたの」

 えっ? 文化祭の演出?