「それじゃあ花、がんばってね」

「うん」

 お母さんと別れ、また教室で一人になる。

 展示された学園新聞の中、白浜くんはどの記事でもキラキラと輝いていた。

 私が一人白浜くんの写真をじっと見つめていると、急にドアが開いて紬くんが入ってきた。

「五十鈴先輩、交代の時間ですよ」

 ――紬くん。

「う、うん」

 立ち上がりかけて、私はギュッとこぶしを握った。

 ……言わなきゃ。

「あ、あのねっ、紬くん、告白の事だけど」

「はい」

 紬くんが息を飲むのが分かった。

 私は思い切って頭を下げた。

「……ごめんなさい。私やっぱり、白浜くんのことが好きなの。紬くんとは付き合えない」

 紬くんは少しの沈黙の後、小さく息を吐いた。

「そうですか」

 紬くんは窓の外を見つめた。

「でもいいんですか? 生徒会長と付き合うと、先輩は苦労すると思います」

 私はうなずいた。

「うん、そうだね。でも好きになっちゃったからしょうがないよ。今さらやめられないの」

 私が笑うと、紬くんも小さく苦笑した。

「それなら仕方ないですね」

 紬くんは勢いよく椅子に腰かけた。

「あーあ、やっぱりあの生徒会長には負けるか」

「紬くんには紬くんの良さがあるよ。ただ私は、白浜くんじゃなきゃダメだっただけ」

 私が言うと、紬くんはくやしそうに口をとがらせた。

「……だといいんですけどね。ま、先輩は早く生徒会長のところに行ってください」

「うん、ごめんね」

 私は教室を出て白浜くんの元へと急いだ。

 私の気持ちはもうすでに決まっていた。

 ――白浜くん。

 白浜くんに会いたい。

 そして伝えるんだ。

 例えこの恋が実らなくても、私の本当の気持ちを。