お昼を食べ終えた私は、午後から新聞部の展示の仕事のため白浜くんと別れ、空き教室へと向かった。

 新聞部の展示をしている教室は三階の一番奥。

 折り紙で作った飾り輪に手作りのポスター。浮かれたような笑い声が遠くから響いてくる。

 いつもとはなんとなく雰囲気の違う階段を上がり、私は新聞部の展示する教室にたどり着いた。

 私は教室前の廊下に立ち、キョロキョロと辺りを見回した。

 うわあ、思った以上に人通りが少ないなあ。

 せっかく今までの記事や新聞部の歴史を頑張ってまとめたのにな。

 お客さんが誰も来ない中、私は撮った写真を確認しながらぼうっと過ごしていた。

「やっほー、花。来たわよ」

 勢いよくドアを開け入ってきたのはお母さんだ。

「お母さん」

 仕事で来れるかどうか分からないって言ってたけど、来てくれたんだ。

 お母さんは教室の中をキョロキョロと見回すと、奥に展示されている新聞に一直線に向かって行った。

「へえ、これが花が作った新聞? すごいじゃない」

「私ひとりで作ったわけじゃないよ」

 私は照れながら答えた。

 お母さんに自分の作った新聞を見られるのは、なんだかすごくこっ恥ずかしかった。

「頑張ったのね。すごいわ。きっとお父さんも喜ぶわね」

「ありがとう」

 お母さんの言葉に、なんだか胸が一杯になった。

 ふと、お母さんが白浜くんが一面に写った新聞を手に取る。

「あっ、この子見覚えあるわ。この前会った花の彼氏ね」

 白浜くんが写った写真を見つめ、笑顔になるお母さん。

「あ……えっと、うん」

 私は曖昧な表情でうなずいた。何と反応していいのか分からない。

「へえ、この子生徒会長だったのね。道理でしっかりしてるはずだわ」

「うん……まあ。取材がきっかけで仲良くなってね」

「へえ、そうだったの」

 お母さんは、白浜くんの写真をしげしげと見つめた。そして

「いい写真ね」

 と一言呟いた。

「あ……うん」

 私は少しうつむいて、白浜くんの写真から目をそらしながら言った。