「すごいね、白浜くん」

 私はポツリとつぶやいた。

 白浜くんはやっぱり行動力もあるし、カリスマ性もある。

 私にはもったいない。釣り合わないよ。

 白浜くんは照れたように笑った。

「いやいや、俺にはこれぐらいしかできることはないからさ」

「そんなことないよ。すごいよ」

 私はギュッと拳を握りしめて下を見た。

 優しいな、白浜くん。

 私の事なんか好きでもないはずなのに。

 白浜くんが本当に好きなのは、アユ先生なのに。

 そんな風に考えると、なんだかとっても泣きたくなってきた。

「そうだ。花、もうお昼食べた?」

 白浜くんが聞いてくる。

「ううん、まだ」

「じゃあ、何か買ってきてあげる。何がいい?」

「えっと、じゃあ、たこ焼き……」

「オッケー」

 白浜くんが財布を持って駆けていく。

 私がその後ろ姿を見つめていると、後ろから声がかかる。

「先輩」

 声の主は、茶髪に可愛い顔をした後輩。

「紬くん」

 私が少しビクビクしながら答えると、紬くんは少し困ったように笑った。

「嫌だなあ、僕はただ焼きそばを買いに来ただけですって」

 と、そこまで言って、紬くんは耳元でささやいた。

「告白の返事は、閉会式まで待ってますから」

「う、うん」

 平気なフリをして答えたけど、心の中はパニックになった。

 それって、閉会式までに答えを出せってこと?

 まあ確かに、あれから何日も紬くんの事待たせちゃってるけどさ……。

 まだ全然、どうするか決まってないよ。

 私が戸惑っていると、白浜くんが帰ってきた。

「五十鈴さん、たこ焼き買ってきたよ」

 わわわっ、白浜くん!?