ギョッとして顔を上げると、目の前には王子様スマイルを浮かべた白浜くんがいた。

「花が焼きそば焼いてるって言うから来てみた」

 ニコリと笑う白浜くん。

「そ、そう」

 私はそっけなく言って目をそらしてしまった。

 だめだ。白浜くんの顔がまともに見れないよ。

 そんな私の気持ちなんか知らないで、白浜くんはニコニコと話しかけてくる。

「ここ、空いてるね」

「うん、場所が悪くて。ほら、三年C組も焼きそばだし」

 早口に答える。

「そっか」

 そう答えると、白浜くんが大きく息を吸い込んだ。

「うわあ、ここの焼きそば、すごく美味いね!」

 えっ!?

 どうしたの、白浜くん、いきなり大きな声だして!

「うん! 麺はモチモチしてるし、濃いソースとよく絡んで美味しい!」

 オーバーリアクションでうちのクラスの焼きそばを褒め続ける白浜くんに、徐々に周りの人たちが集まってくる。

「何? 何?」
「生徒会長おすすめの焼きそばだって!?」
「あの生徒会長が絶賛してるらしいぜ!」

 あれよあれよという間に、お店には人だかりができてしまった。

「焼きそば下さい!」
「僕にも!」
「私にも!」

 そして、余るほどあった焼きそばは、お昼前にはほぼ完売してしまった。