そんなことを考えていると、紗雪ちゃんがお弁当箱の蓋をパタンと閉じた。

「はあ、ごちそうさま。もうお腹いっぱい」

 私は沙雪ちゃんの小さなピンク色のお弁当箱を見つめた。

 ……って、嘘でしょ。

 あんな小さいお弁当でもうお腹いっぱいなの⁉︎

 私だったらあれ、三口ぐらいで食べきっちゃうんだけど。

 びっくりして周りの女子たちのお弁当を見ると、みんな小鳥が食べるみたいに小さなお弁当箱。

 色だって、ピンクとか水色とか薄紫とかで女の子らしくて可愛い。

 私は慌てて自分のお弁当に目をやる。

 飾り気のない大きな銀のお弁当箱には、ぎっしりのご飯に梅干、それから山盛りの唐揚げに煮物。

 なるほど、これが女子力の違いってやつなのか。

 私は何となく自分がモテない理由が分かった気がした。

「どうしたの? 暗い顔して」

 沙雪ちゃんが不思議そうな顔をする。

「あ、ううん、何でもない。ただ、自分がモテない理由を悟っただけ」

 私が苦笑いしていると、沙雪ちゃんが大きく目を見開いた。

「えーっ、花、モテないかな? あのいつも一緒にいる後輩くんはどう?」

 いつも一緒にいる後輩くんって、まさか紬くんのこと? 

 私は慌てて否定した。

「いやいや、紬くんは違うよ。ただの幼馴染」

「えーっ、そうなの? 彼、見た目も可愛いし、真面目そうだし、付き合っちゃえばいいじゃん」

 ニヤニヤしながら行ってくる沙雪ちゃん。

 ええっ、付き合う?

 私と紬くんが?

 うーん、全然想像がつかない。

 そりゃ、紬くんは真面目ないい子だけど、子供の時からずっと一緒だし、今までそういう対象として見たことはない。

 というか、今まで好きな人すらできたことないから、そういう気持ちはよく分からないや。