私が下を向いていると白浜くんが首をかしげる。

「どうしたの、花。何か変だよ」

「えっと」

 私はグッとつばを飲み込むと、恐る恐る話し出した。

「うん……あのね、私……見ちゃったの。アユ先生が夜中に車で白夜くんのこと送っていったって。二人が放課後会おうって約束してたところも」

 白浜くんの箸がピタリと止まる。

 だけどその後、すぐに白浜くんは笑顔を作ってこう言い放った。

「花の、聞き間違いじゃないの?」

 その瞬間、私は分かってしまった。

 ……あ。

 白浜くん……今ウソついた。

「とにかく、これは気にしなくていいから」

「……うん」

 私はギュッと拳を握りしめ、下を向いた。

 白浜くん、どうしてウソつくの?

 やっぱり白浜くんは、アユ先生と付き合ってるのだろうか。

 それならそうと、はっきり言ってくれればいいのに。

 せめて私には正直に話して欲しかったよ。

 白浜くんはいつもそう。

 一人で何かを抱えこんでる。

 何か秘密を抱えているのに、何でもない顔をして、完璧生徒会長を演じてる。

 でも私には少しずつ本当の顔も見せてくれている。

 そう思っていたけど――結局は私も信頼されていなかったのかな。

 私にはそれがどうしようもなく悲しかった。

 私は自分のカバンにお弁当箱を押しこんで立ち上がった。

「ごちそうさま」

「あれ? もういいの?」

「うん。あの私――その、文化祭の準備があるから先に教室に戻るね」

「ああ、うん、がんばって」

 私はウソをついて生徒会室を出た。

 今にも雨が降り出しそうなうす曇りの空。

 私の心もどんよりと晴れなかった。