「はあ……」

 まさか紬くんが私の事、好きだなんて。

 懐かれてるとは思ってだけど……。

 私は、紬くんと出会ったばかりの時のことを思い出した。

 紬くんと私の出会いは私が小四で紬くんが小三の時。

 紬くんは私の家の隣に引っ越してきたんだ。

 引っ越してきたばかりの紬くんは、顔が女の子っぽくて気弱だったから、近所の男の子たちにしょっちゅういじめられてたっけ。

「あんたたち、どっか行きなさい! 弱い者いじめなんてサイテー!」

 その度に私は、そう言っていじめっ子たちを追い払っていた。

 今思うと、全然可愛げのない女の子だったと思う。

 そんな私のどこを好きになったのか分からないけど、私がいじめっ子から助けてあげると、紬くんはこんな風に言ってニッコリ笑っていた。

「ありがとう。いつか僕も、花ちゃんみたいな立派な男の子になるよ!」

 涙をぬぐう男の子は、私よりずっと小さくて、たよりなかった。

 けど私を幸せにすると言った紬くんは、いつの間にか私より身長も大きく、男らしくなっていた。

 もし、紬くんと付き合ったら、精いっぱい尽くしてくれるだろうし、幸せにしてもらえるんだろうな、とは思う。

 母親同士も友達だから、お母さんも喜ぶかもしれない。

 だけど――。