私が顔をしかめながらスマホの画面を眺めていると不意にパシャリと音がした。

 見ると、今度は白浜くんが使い捨てカメラを手に笑っていた。

「もう、こんなところ撮らないでよ」

 私がすねると、白浜くんは真面目な顔をしてこう言った。

「いや、こういう何気ないシーンを撮るのが良いんだって」

「写真ならさっき撮ったでしょ⁉」

「さっきのは人に見せる用。こっちは俺用だから」

 そう言いながらパシャパシャと私の写真を撮る白浜くん。

「もう、やめてよ! バカ!」

「あはは、俺、バカなんて初めて言われた」

 クスクス笑う白浜くん。

 全くもう。

 そりゃ、秀才の白浜くんはバカなんて言われたことないだろうけどさ。

 何がそんなにおかしいの?

「現像したら見せてよね。変に映ってないかチェックするから」

 私が言うと、白浜くんは「うん、分かった」と本当に分かったんだか分かってないんだか分からないような顔でうなずいた。

 その顔を見て、私は自分の写りが本気で心配になった。

 全くもう。もし変な写真だったら絶対に許してやらない。

「……あ、そういえば、私に話って何だったの?」

 帰り道、ふと思い出して白浜くんに聞いてみる。

 白浜くんは少しキョトンとした後、笑って首を横に振った。

「いや、いいんだ。いずれ時期が来たらまた話すよ」

「……ふーん」

 私は疑問に思いながらもそのまま家に帰った。

 家に帰ると、私は白浜くんから送られてきた二人の写真をじっくり見てみた。

 不思議だな。

 完璧王子の白浜くんと恋愛オンチの私。

 釣り合わないはずなのに、なぜか写真の中の私たちはまるで何年も前から一緒にいるカップルみたいだった。