「それじゃあ、次に行こっか」
私が映画館の外に出ようとすると、白浜くんは私の腕をギュッとつかんで制止した。
「あ、ちよっと待って」
「えっ」
私が戸惑っていると、白浜くんはスマホを取り出した。
「写真、撮らないと」
そっか。今日は二人でデートに来たっていう証拠写真を撮りに来たんだった。
「そっか。じゃあ、あそこにする?」
私はゾンビ映画のポスターの前を指さした。
「うん、いいね」
白浜くんと二人で並び、スマホで自撮りをする。
「そういえば、今日はいつもの大きなカメラ持ってないんだね」
白浜くんが私のスマホを見て不思議そうな顔をする。
「うん。外に持っていくには大きすぎるし、無くしたり落としたりしたら嫌だから」
私が答えると、
「そっか。お父さんの形見だもんね。大切にしないと」
と、白浜くんは納得したようにうなずいた。
「がおー」
「ゾンビだぞー」
二人でゾンビのポーズをして記念写真を撮る。
「どんなふうに写ってるかな」
二人で撮り終わった写真を見てみると、急に白浜くんが噴き出した。
「……プッ」
スマホの画面には、ゾンビのポーズをしているにも関わらずクールにかっこよく写った白浜くんと、身も心もすっかりゾンビになりきったひどい顔の私が写っていた。
うげっ、これはひどい!
「やばい。これ撮り直したほうがいいかも。こんなの人に見せられないよ」