「え……えっと……うん」

 正直にうなずく。

 でも、ホラーなんてデートっぽくないよね。もっと女の子っぽい映画にしたほうが――なんて思っていると、白浜くんがゾンビのポスターを指さした。

「じゃ、こっちにしよっか」

「えっ、いいの?」

「うん。だって、見たくないものを見るより、見たいものを見た方がいいじゃん」

「そうだけど……」

 でも、いいのかな?

 私が戸惑っていると、白浜くんはスタスタと券売機のほうに行き、ゾンビ映画のチケットを買ってしまった。

「いいんだ。実は俺もこういう重いストーリーあんまり好きじゃないし。ほら、早く行こ」

 白浜くんが私の腕を引っ張る。

「う、うん」

 私は白浜くんに引っ張られるがままにゾンビ映画のスクリーンに入った。

 女の子たちやカップルに人気の恋愛映画とは対照的に、ゾンビ映画を見る人は少なくて中はガラガラ。

 私たちは真ん中より少し上の良い席に座ることができた。

「ここ、見やすそうだね」
「うん」

 映画が始まると、元々ゾンビ映画が好きなこともあって想像よりずっと面白い。

 私が食い入るように画面を見つめていると、不意に白浜くんの手が私の手に触れた。

 わっ。

 私が少しびっくりしていると、同時にゾンビの首がスポーンと飛んだ。