「それでさ、これ。ちょうど見たい映画があるんだけど、男同士だとちょっと入りにくくてさ、一緒に見に行かない?」

 白浜くんが見せてくれたのは、最近女子たちの間で人気の恋愛映画のパンフレットだった。

「あっ、これ知ってる。沙雪ちゃんが泣けるって言ってた映画だ」

 私はパンフレットを受け取った。

 表紙では最近話題の美人若手女優と若手俳優が桜の木を背景に抱き合っている。

 この映画、紗雪ちゃんだけじゃなくて他のクラスの女子たちもみんな良かったって言ってたんだよね。

 残念ながら、私はそんなに恋愛映画には興味ないんだけど……。

 私は白浜くんの顔をチラリと見た。

 まあ、確かにこの映画、白浜くんが見たがるのはイメージには合ってるよね。

 男子一人じゃ見に行きづらいって言うのも分かる。
 
 公式の彼女がいるのに誘わないって言うのもおかしいし……。

「いいの、悪いの、どっち」

 白浜くんの整った顔が迫って来る。

 私は渋々答えた。

「まあ……土曜日なら空いてるけど」

「じゃあ決まりね。ちょっと花に話したいこともあるしさ」

 話したいことって何だろう。

 ま、いっか。

 結局、私は白浜くんの強引さに押し切られる形でデートに行くことになってしまった。

 まあ、私も花の女子高生だし、たまにはこういう流行りのものも勉強しないとね。