一通り話し終えると、白浜くん今度は綾瀬さんの顔を見た。

 白浜くんにうながされ、綾瀬さんはうなずいて話し始めた。

「……あの、みなさん誤解しているようですが、私は白浜くんと付き合っているわけではありません」

 綾瀬さんの話を聞いて、噂話をしていた女子たちが顔を見合わせる。

「そうなの?」
「でも……」

 ざわざわする女子たち。

 綾瀬さんは続けた。

「それに……皆さん私と白浜くんのこと、誤解しています。私には他の高校に彼氏がいますので、白浜くんとはそういった関係じゃないんです。花さん、勘違いさせてごめんなさい」

 綾瀬さんの発言に、みんなびっくりして場が静まる。

 えっ、綾瀬さんって他の学校に彼氏がいたの⁉

 じゃあ、白浜くんとは何ともないってこと?

 そうだったの? 私はまたてっきり……。

「ご、ごめんなさい」
「なんか、誤解だったみたい」

 女子たちが私に頭を下げる。

「ううん、別に謝らなくてもいいよ。ただの勘違いだったんだから」

 私が苦笑すると、白浜くんはふうと息を吐いた。

 白浜くんはグイッと私の腕を引っ張った。

「それじゃ、行こうか」

「う、うん」

 私は白浜くんの整った横顔を見つめた。

 まさか白浜くんがあんなに怒ってくれるだなんて思わなかった。

「あ、あの」

 教室に戻った私は、白浜くんに頭を下げた。

「ありがとう。庇ってくれて……」

 白浜くんは少しキョトンとした後で、いつもの王子様スマイルに戻った。

「いや、大丈夫だよ。こうなったのは俺のせいでもあるしね。本当にごめん」

「ううん、白浜くんのせいじゃないよ」

「それじゃ、俺、教室に戻るね」

「うん」

 私は教室に戻る白浜くんの後ろ姿に手を振った。

 ……あーあ、またいつもの白浜くんに戻っちゃった。

 私はもっと白浜くんの素顔を知りたい。

 本当の白浜くんを知りたいのに。

 どうして白浜くんは、自分を(いつわ)るのだろう?

 考えても考えても、私には分からなかった。