家に帰った私は、ベッドに横たわりゴロリと天井を見上げた。

 綾瀬さん、すごく必死そうだった。

 やっぱり綾瀬さんは白浜くんのこと好きなのだろうと思う。

 はた目から見ても二人一緒にいるとすごくお似合いだ。

 付き合うふりをするのは私じゃなくて綾瀬さんのほうが良かったんじゃないか。そんな思いが頭をよぎる。

 でも白浜くんにとってはそれでは駄目だったんだろう。

 白浜くんが求めてるのは、自分に好意を持っていない相手なんだから。

 何せ自分のことを何とも思っていない人のご飯しか食べられないくらいなんだから。

「ああもう……!」

 私は無性にあのクールなポーカーフェイスを引き裂いてやりたくなった。

 いつも人を小ばかにしたような優等生の仮面を被っている白浜くん。

 何か秘密を隠しているのに、人にはそれを見せない完全無欠の生徒会長。

 その本性をみんなの前で暴いてやりたい。

 そんな完璧王子様の中にいる本当の白浜くんを引きずり出してやりたい。そんな衝動に駆られて仕方なかった。

「でやっ」

 私はベッドのクッションを二回ほど殴った。

 ガラリ。窓を開けてベランダに出る。 

 はあ、いったん落ち着こ。

 ベランダに出た私は、外の冷たい空気を思い切り吸い込んだ。

 カレンダーはもう九月。昼間は残暑が厳しかったのに、夜になるとすっかり風が秋の冷たさになっている。

 ふと空を見上げると、夕暮れの空は赤とオレンジが溶け合うようなキレイなグラデーションになっていた。