私はあわてて頭を下げた。

「ごめんなさい、邪魔でしたらすぐに出ていきますから」

 綾瀬さんはさっきのキツい顔がウソだったかのように、可愛らしい笑顔に戻った。

「いえ。別に私は何とも思わないけど、先生に見つかったら困るんじゃないかなって思っただけ。余計なお世話だったらごめんなさい」

 そう言うと綾瀬さんはそそくさとドアを閉めて生徒会室から出ていった。

 私はホッと息を吐いた。

 綾瀬さんはやっぱり白浜くんのことを好きなんじゃないかなと思う。

 だとしたら私はなんだか悪いことをしてるかもしれない。

「ねえ、白浜くん」

 私は思い切って白浜くんに尋ねてみた。

「何」

「本当に、彼女役は私でいいの?」

「何で」

 キョトンとした顔の白浜くん。全くもう。

「だって他にもっと綺麗で可愛くていい人がいるんじゃないの?」

「何言ってんの。俺は花がいいんだから変なこと気にしなくていいよ」

 のん気にお弁当を頬張る白浜くん。

 それって私が白浜くんのことを好きじゃないからってことだよね。

 でもそれだったら他にもっといい人がいそうなものなのに。

 私は小さくため息をついた。

 本当にこれでいいのだろうか。