「あっ、花!」
「見たよ、今週号の学校新聞!」
「あの生徒会長と付き合ってるだなんてすごーい!」

 新聞が発売されるやいなや、私はクラスの女子たちに囲まれた。

「いや、あの、こう……白浜くんとは取材をしているうちに成り行きで付き合うことになって……」

 私はしどろもどろになりながら白浜くんと付き合うことになった経緯について答えた。

 もちろんほとんどがフェイクなんだけどね。

 事前に白浜くんと細かく話をすり合わせておいたから嘘だとバレたりはしないとは思うけど、なんだかひやひやする。もともと嘘をつくのが得意じゃないっていうのもあるけど。

 女子たちは私の嘘のなれそめを聞くと、まるで少女漫画でも読んでいるみたいに目をキラキラと輝かせた。

「そうなんだ!」
「すごーい」
「まさかあの花がねぇ」

 私がビクビクしながら席につくと、今度は沙雪ちゃんが新聞を手にやってきた。

「花ーっ、新聞見たよ! 白浜くんと付き合ってるって本当? なんで言ってくれなかったのよ」

「あっ、沙雪ちゃんおはよう。……えっとその、ゴメン、なんだか言い出すタイミングが無くて」

 そうだよね、親友なのに今まで一言も話さなかったなんて沙雪ちゃんからしたらショックだよね。

「白浜くんからも絶対に誰にも話すなって口止めされてたし」

 私は申し訳ない気持ちになりながらも答えた。

「そうなんだ。だよね。みんなにばれたら大騒ぎになるもんね。でも私だったら我慢できずに口を滑らせちゃいそう。花、よく今まで言わずに我慢できたねー」

 感心したような顔でうんうんうなずく沙雪ちゃん。

「ははははは……」

 私は笑ってごまかすしかなかった。

 口を滑らすも何も、私たちの関係は真っ赤な嘘。

 付き合ってなんかいないのだから。