「確かにそうかもしれないけどさ」

 私が迷っていると、白浜くんが頬杖をつきながら上目遣いに聞いてくる。

「それとも、あの後輩に誤解されるのがイヤとか?」

 へっ?

「後輩って、紬くん? ないない。ただの幼なじみだよ」

 もう、沙雪ちゃんだけじゃなく白浜くんまで、何言ってるんだか。

「本当に? 五十鈴さんは何ともなくても、向こうは好きなんじゃないの?」

 私は首をブンブンと横に振った。

「違うよ、紬くんとは姉と弟みたいな関係で、そんなんじゃないの。それに幼稚園のころから一緒だけど、一度も告白されたことなんてないし」

「ふーん」

 信じられない、という様子の白浜くん。

 本当に紬くんとは何ともないんだけどな。

「じゃあ、別に彼女のふりをしてもいいじゃん」

「うん……」

 私はしぶしぶうなずいた。

 白浜くんの言う通り、今は良くても、次はこうやってお互いの部屋に出入りする所をスクープされるかもしれない。

 そんなふうになって、ある事ない事日報に書かれるくらいなら、先に新聞部で熱愛宣言しちゃった方がいいのかも。

 私はうなずいた。

「分かった。次の号の新聞で、熱愛宣言しちゃおう」

「うん、よろしくね」

 ニコニコ笑って肉じゃがを頬張る白浜くん。

 はあ。

 ニセとは言え、白浜くんの彼女になるだなんて、学校中が大さわぎになりそう。

 ……気が重いなあ。