「まあでも、倒れた時に頭を打ったから一応MRIは取ってもらうことになったんだけどね。でも何ともなかったみたい」

「そうだったんだ」

 私がへなへなとその場に座り込んでいると、お母さんは白夜くんのほうに視線をやり、ニヤリと笑った。

「っていうか花、彼氏と一緒に来たの? まさかデート中だったとか?」

「へ?」

 言われて、私は白浜くんと手を繋ぎっぱなしだったことに気づいた。

「う……ううん、これは違うの」

 私はすごく恥ずかしくなって、慌ててつないだ手を離した。

 お母さんだけでなく叔母さん、白浜くんを見るやいなや目を輝かせる。

「あらあら、素敵な彼氏ねぇ」
「本当に。お似合いよ!」

「だから違うってば」

 白浜くんは瞬時にして完璧王子スマイルを作りあげると、二人に頭を下げた。

「白浜港人と申します。花さんには、いつもお世話になっております」

「あらあら、ご丁寧に」

「本当、イケメンだし感じのいい男の子ねぇ」

 もう、違うってば。

 白浜くんったら、誤解を招くようなこと言わないでよ。

「あの……この人は本当に何でもないの。ただ隣の部屋に住んでるだけで……」

「あら、隣の部屋から始まる恋!」
「素敵、どこぞの恋愛映画みたい」

 私は必死で誤解を解こうとしたんだけど、お母さんと叔母さんはきゃあきゃあ少女みたいにはしゃいで効く耳を持たない。

 私は大きなため息をついた。

 ……全くもう。