ほどなくしてタクシーは寮の前に到着し、私たちは二人で総合病院に向かうことになった。

「山中総合病院までお願いします」

 白浜くんがテキパキと運転手さんに行き先を告げてくれる。

「さ、五十鈴さんも乗って」
「う、うん!」

 私も慌ててタクシーに乗りこんだ。

 バタン。

 大きな音を立ててタクシーのドアが閉まる。

 夜の景色がビュンビュンと窓の外を流れていく。

 ふう、良かった。

 心臓は相変わらず変な音を立てているし、背中に妙な汗も流れているけれど、とりあえずこれで何とかなりそう。

 私がタクシーに乗りこんで一息ついていると、スマホにメッセージが来ていることに気がついた。

 あ、叔母さんからだ。

 見ると、お母さんの入院先はやっぱり山中総合病院みたい。

「白浜くん、行き先、山中総合病院で合ってたみたい」

「そっか、良かった」

 でも叔母さんも慌ててるのか、それ以上のことは何も書かれてない。

 お母さん、大丈夫なのかな。

 どうして入院なんてすることになったんだろう。

 無事だといいけど……。

 祈るようにスマホをにぎりしめていると、白夜くんがポツリとつぶやいた。

「大丈夫だよ、きっと」

「……うん」

 心に小さなろうそくの火が灯ったみたいに、胸がほわっと温かくなる。

 不思議だな。

 白浜くんに大丈夫だって言われると、本当に大丈夫なような気がしてきた。