「寮母さん!」

 私たちが部屋を出て寮母室へ向かおうとすると、ちょうど寮内を見回っている寮母さんと鉢合わせした。

「あらまあ、二人そろってどうしたの?」

 キョトンとした顔の寮母さん。

「寮母さん、ちょっと病院に行きたいんですけど、車って出してもらえますか?」

 私の言葉に、寮母さんが心配そうに眉を寄せる。

「病院? もしかして白浜くんがまた倒れたの?」

「いえ、違います。実はうちのお母さんが救急車で運ばれたって連絡があって」

 私が事情を説明すると、寮母さんは深くうなずいた。

「なるほどね。でも残念だけど私は車を持ってないんだよね」

「そうなんですか」

 私が落ち込んでいると、寮母さんは続けてこう言った。

「でも緊急の用事みたいだし、私が普段使ってるタクシーを呼んであげましょ」

 そっか、タクシー。

 その手があったんだ。

 一人でタクシーなんて乗ったことないけど、白浜くんがいるなら大丈夫かな。

「ありがとうございます」

 私と白浜くんは深々と頭を下げた。

 良かった。これで病院に行ける。