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「俺と五十鈴さんの熱愛報道? それは面白いね」

 私の部屋ですっかりくつろぎながら白浜くんが笑う。

「もう、笑い事じゃないよ。こんなこと書かれたら、白浜くんのイメージも悪くなるでしょ」

 だけど白浜くんはあっけらかんとした顔で答えた。

「そう? 俺は気にしないよ」

 本気? 白浜くんって誰よりもイメージとか外聞を大事にしそうなのに。

 選挙に勝って生徒会長になるっていう目標を達成したからそこまでは気にしないのかな。

 っていうか、好きな人がいるって言ってなかった?

 あれは私をからかうための嘘?

 それともそんなことも考えられないほどお腹が空いてるの?

 私があきれていると、白浜くんがお腹を空かせた子犬みたいな顔で聞いてきた。

「それより今日の晩ご飯何?」

 私はお鍋の蓋を開けながら答えた。

「今日は肉じゃが。もうすぐできるから」

 家には白浜くんのファンの子が北海道から取り寄せたじゃがいもと玉ねぎがたくさん余ってる。

 前にカレーを作ったらすごくホクホクして美味しかったから、今日は肉じゃがにしてみたの。

 私が答えると、白浜くんは拳を握り喜ぶ。

「やった。俺、肉じゃが大好き」

 全くもう。

 こんな風に急に白浜くんが突撃してくるのもいつの間にか慣れっこになってしまったけど、本来ならあり得ないんだからね。