「気になる? 誰が好きなのか」

 白浜くんが私を見つめる。

「別に」

 私がそっけなく答えると、白浜くんはケラケラと笑いだした。

「だよね。五十鈴さん、俺に興味ないから」

 全く、何がそんなにおかしいんだか。

 あ、そっか。

 私が白浜くんのこと好きになっちゃうと、料理に何入れられるか分からないもんね。

 私は白浜くんを安心させるためにこう言った。

「私なら白浜くんを好きにならないから大丈夫だよ」

「うん」

 白浜くんが神妙な顔でうなずく。

「……そっか。それなら俺に万が一のことがあっても大丈夫かな」

 白浜くんは私に聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で言った。

 その言葉の意味を、私は深く追求することはしなかった。

「とにかく、私は白浜くんのことは好きにならないから、白浜くんは安心してうちにご飯を食べに来て。ちゃんと栄養つけること」

 私の言葉に、白浜くんはプッと噴き出した。

「なんか五十鈴さん、お母さんみたい」

「失礼な」

 まだお母さんなんて歳じゃないっての。

 でも確かに、私って心情的には白浜くんのファンとか恋人とかいうよりはお母さんっぽいかもしれない。

 白浜くんにたくさん食べて欲しいし、栄養つけてほしい。

 またお腹が空いて家の前で倒れられても困るもんね。