「はい、できたよ麻婆茄子」
机の上に麻婆ナスを置くと、白浜くんはきらりと目を輝かせた。
「これ、ご飯にかけてもいい?」
「べつにいいけど」
麻婆丼かあ。それもいいかもしれない。
私も白浜くんの真似をしてご飯に麻婆ナスをかけてみた。
「いただきまーす」
「いただきます」
二人で麻婆ナス丼を食べる。
うん、しょっぱすぎないかなと思ったけど、ご飯にかけるとちょうどいいかも。
なんてことを考えていると、急に白浜くんの長くて細い指が、私の頬に伸びてくる。
えっ、何――。
白浜くんの指の先が私の頬に触れる。
「ご飯粒ついてる」
……ドキッ。
私が固まっていると、白浜くんは笑顔でご飯粒を取った。
「はい、取れた」
「……ありがと」
私は何も感じていないふりをしてツヤツヤ光るナスに視線を戻した。
白浜くんは星空みたいにきれいな瞳を細めて私を見つめてくる。
「ドキドキした?」
えっ、何それ。私のことからかったの?
「まさか。ちょっとビックリしただけだよ」
私はツンとそっぽを向いた。
白浜くんは頬杖をついて私を見つめてくる。
「ふーん」
「なんでニヤニヤしてるの?」
「いや、五十鈴さんを惚れさせようと思ったけど、どうやらうまくいかなかったみたいだ」
「バカじゃないの」
私があきれながらいうと、白浜くんは大きな声を出して笑った。
「どうやれば君の心を動かせるのかな」
もう、ワケわかんない。
私、からかわれてるのかな。
世の中の女性は皆自分に惚れてるはずなのに惚れないのはおかしい、みたいな感じ?
うぬぼれすぎだろ白浜港人。