「五十鈴さん、今日の晩ご飯なに？」

　白浜くんは今日もまた、当たり前のような顔をして私の家にやってきた。

　私は呆れながら白浜くんの顔をまじまじと見た。

「……まだ作ってないけど、うち入る？」

「入る」

　私が仕方なく言うと、白浜くんは迷いなく部屋に上がりこんできた。

「それじゃ、おじゃまします」

　持参したペットボトルのお茶をテーブルで飲み、テレビの前でくつろぎだす白浜くん。

　全くもう。ここは白浜くんの実家じゃないのですが。

　こっちは白浜くんのファンや綾瀬さんに睨まれて大変なのに人の気も知らないで。

　まあ、年頃の男の子をホイホイ家にあげる私もどうかと思うけど、その点は白浜くんはなんだかんだで信用してる。

　だってあんなにモテるのに彼女も作らないほど女嫌いだもんね。

「今日は何を作ろうかなー」

　私は冷蔵庫をのぞきこんだ。

　冷蔵庫の中には、白浜くんがファンの子からもらった野菜や果物がぎっしり入ってる。

　その中でも、私は紫色につやつや光るナスと目が合った。

　よし、君に決めた。

　まだ残暑は厳しくて夏みたいな気候だけど、秋と言えばナスでしょ。

「ナスがあるから、今日は味噌いためかな。麻婆ナスもいいな」

　私が言うと、白浜くんは嬉しそうな声を上げる。

「おっ、いいね。俺、麻婆ナス好き」

　子供のようにはしゃぐ白浜くん。

　全く、人の気も知らないで。