私は白浜くんの顔をチラリと見た。

　白浜くんはいつも通り、さわやかな王子様スマイルでタオルを受け取って綾瀬さんと話してる。

　私はその顔を見ているうちに、なんだかすごくイライラしてきた。

　なにあの作り笑顔。

　私といる時とは全然ちがう。

　家にいる時はスウェットにメガネで王子様とはほど遠い腹ペコキャラなくせに。

　相手が美人だからだろうか。

　でも、あんな公認の彼女みたいな子がいるのに、私の家になんて来ていいのかな？

　すると私の視線に気づいたのか、白浜くんが急にこちらへ振り向き、笑顔で手を振った。

　――やばい。見てたのがバレたんだ。

　私は小さく手を振り返すと、慌てて目をそらした。

「今、白浜くん、花に手振ってなかった？」

　沙雪ちゃんが目を丸くする。

「ま、まあ、この間取材したし、一応気を使ってるのかもね」

　私は苦笑いをした。

　言えないよ。

　白浜くんが毎日うちに来てご飯を食べてるだなんて。

　はあ。　

　周りに変な勘違いされると困るし、せめて学校では絶対に話しかけないでほしい。