「あ、ちょっと待って」

 部屋に入ると、白浜くんは机の上に置いてあったノートみたいなものを隠した。

「さ、どうぞ」

「今の何? エロ本?」

 私が茶化すと、白浜くんは本気だか冗談だか分からない顔でこう答えた。

「そ。他の人に見られたら恥ずかしいから、俺が死んだら五十鈴さんが処分してね」

 なんで白浜くんのエロ本を私が処分しなきゃならないのよ。

「バカ言わないの」

 私は呆れかえりながらも白浜くんの部屋に上がりこんだ。

「この辺、持って行っていいよ。これも」

「えっ、本当に良いの?」

 そう言いながらも、遠慮なく白浜くんの指さす袋を開けてみる。

「わあ、見て見て、筑前煮だあ。すごい美味しそう」

 私がタッパーに入った煮物を見せると、白浜くんは見るからに嫌そうな顔をした。 

「それ、欲しかったらあげるよ」

「どうして。食べないの?」

 美味しそうだけどなあ。

 私が不思議に思っていると、白浜くんはこう続けた。

「うん、食べないよ。だってファンの作ったものなんか何入ってるか分からないし」

「もったいないなあ」

 私が他のタッパーも開けて中身を確認していると、白浜くんはポツリとつぶやいた。

「前に実際にあったんだよね。おまじないとか言って髪の毛入れたり血を入れたり」

「うわ、それはイヤだなあ」

 そっか。それで他人の作った料理は受け付けないんだ。

 モテモテなのも大変なんだな。

 ……ってあれ? 

 そこで私は少し疑問に思った。

 白浜くん、私が作った料理は平気だよね。

 一体どうしてなんだろう。