「仲良くって……それでまさか、先輩、生徒会長のことを好きになっちゃったんじゃ」

「いや、ないない。ありえないから!」

「ふーん」

 私は必死で否定したんだけど、紬くんは不満そうな顔をする。

「とにかく、ありえないから!」 

 私はきっぱりと言い放った。

 そんなことありえない。

 いくら顔がいいからって、そんなに簡単に男の人のことを好きになんてなるはずがない。

 それに――相手はあのツンドラの白浜くんだし。

 お弁当を作ってあげている間はいい顔をするかもしれないけど、用済みになったら冷たくなる可能性もある。

 勘違いなんかしたら痛い目に合うに決まってる。


 クラスに戻ると、今度はクラスの女子たちに囲まれる。

「あ、花!」
「このインタビュー記事、超良かった」
「あまってる新聞あったらちょうだい」
「私にも!」

 私はこんなこともあろうかと予備に持っておいた記事を何枚か友達にあげた。

「足りない分はまた後で刷るから」

「うん、ありがとー」

 一つの新聞を数人で固まって読む女子たち。

「美味しい料理を食べるのが好きだって!」
「きゃあ、私、何か差し入れ持ってっちゃおうかなあ」
「私、お母さんに頼んでみようかなあ」

 良かった。

 白浜くん料理苦手だって言うから心配してたけど、きっとこの記事を読んだ女の子たちが差し入れしてくれるだろう。

 これで私がお弁当を作る必要もなくなるかもしれない。