白浜くんの考えてることってよく分からないな。

 ま、いっか。

「それじゃ、取材ありがと」

 荷物を持ち、部屋を出ようとする私に、白浜くんは慌てて声をかけた。

「あ、待って、五十鈴さん。お弁当なんだけど、今日だけじゃなくこれから毎日作ってもらうってことはできる?」

「えっ?」

 白浜くんに、私が毎日お弁当を作る?

「あ、もちろん、かかった材料費は支払うよ。取材も好きな時にしていいし」

「それならいいけど……」

 正直なところ、好きな時に取材させてもらえるのなら、お代はいらないくらい。

 でも、何だかビックリ。他人の作った料理は食べないって聞いてたのに。

「作るのはいいけど、高倉さんのクッキーみたいに突き返されても困るから捨てるなら家で捨てて。失礼だから」

 私が言うと、白浜くんは少しキョトンとしたあとで、困ったように頭をかいた。

「やっぱりあれ、見られてたんだ。でも俺、五十鈴さんのお弁当は捨てないよ」

「私だけじゃなく、他の人のプレゼントも。失礼だから」

 私が強い口調で言うと、白浜くんは観念したように両手を上げた。

「分かったよ」

 本当に分かったんだか、分かってないんだか。

 でもそれ以来、白浜くんは本当に女子からのプレゼントを断らなくなった。

 「ツンドラの雪解け」なんて噂も経ったけど、雪解けのわけは恐らく世界でただ一人、私しか知らないだろう。