「え? 何?」

 私がカメラを下すと、白浜くんは自分の左頬を指さした。

「左のほうが写りがいいから、少し左から取って」

 その言葉に、私は少し呆れてしまう。

「白浜くんって、人からどう見えるか意外と気にするタイプなんだ」

「そ。自己分析は選挙に勝つには必要なことだよ」

 真顔で答える白浜くん。

 別にどこから撮ってもイケメンなのにな。

 言われた通り左側から白浜くんを撮ると、確かに悔しいくらい完璧で爽やかな写真が取れた。

「これでよし……っと」

 私が採れた写真のチェックをしていると、不意に「パシャリ」と音がした。

「えっ⁉」

 私が慌てて顔を上げると、使い捨てのインスタントカメラを持った白浜くんがニヤリと笑っていた。

「不意打ち成功」

 えっ、どういうこと?

「今、私の写真撮った?」

 恐る恐る聞いてみると、白浜くんはいたずらっぽく頬をほころばせた。

「うん、いつも俺ばっかり撮られてるから、仕返し」

 仕返しって……全くもう。

 ていうか何で今どきインスタンドカメラなんだろう。