次の日の昼休み、私はさっそくお弁当を持って生徒会室へと向かった。

――コンコンコン。

「生徒会長、五十鈴です」

 ドキドキしながら生徒会室をノックし、少しかしこまった声を出す。

 少しして白浜くんが生徒会室からひょっこりと顔を出した。

「はい」

「五十鈴です。取材に来ました」

「……他に誰もいないよね?」

 白浜くんの問いに私はうなずいた。

「はい」

「なら良かった。入って」

 白浜くんは警戒しながらも私を生徒会室に招き入れてくれた。

 私は生徒会室の黒いソファーに座ると、さっそくカバンからお弁当を取り出した。

「はい、これお弁当」

「ありがとう。開けてもいい?」

「どうぞどうぞ」

 白浜くんがお弁当箱のふたを開ける。

 お弁当箱には、唐揚げやウインナー、茹でたブロッコリーにミニトマト、それに卵焼きといったごく普通のおかずが入っている。

 お弁当は、あんまり張り切りすぎるのも恥ずかしいからごく普通の中身にした。シンプルイズベストというわけだ。

 白浜くんって見た目からして良いところのお坊ちゃまのにおいがプンプンするし、口に合わない可能性もあるけれど――庶民すぎるって怒られたりして。

「うわ、すごい美味しそう」

 だけど私の心配をよそに、白浜くんは子供みたいに目を輝かせた。

 良かった、喜んでくれたみたい。

 こんなに喜んでくれるなんて、白浜くんの好きなおかずでも入ってたのかな。

 夢中でお弁当を頬張る白浜くんを、私はぼんやりと見つめた。

 なんだかまだ信じられない。

 あの白浜港人が私の作った超庶民的なメニューのお弁当を食べているなんて。

 なんだか頭がくらくらする。

 まるで夢か遠い宇宙の先のパラレルワールドでの出来事みたいだ。