「ほら、俺は自分で料理できないし、売店や学食に買いに行くのも大変だからさ」
――そういうことか。
確かに、女の子たちに囲まれたら食事どころじゃないもんね。
「この間食べた五十鈴さんの料理、美味しかったしさ。ダメ?」
びっくりしたけど、料理は得意だし悪い条件じゃない。
むしろすごい好条件。
私は思いっきりうなずいた。
「いいよ。それで取材させてくれるのなら」
「本当? やった」
喜ぶ白浜くん。
こっちこそ信じられないよ。
まさかこんなに簡単に取材ができるだなんて。
喜ぶ私をよそに、白浜くんは声をひそめる。
「でもこのことは他のみんなには内緒にして。女の子にお弁当作ってきてもらったなんて知られたら大変だから」
「もちろん」
そうだよね。
そんなことファンの女の子たちに知られたら大変なことになっちゃう。
「じゃあ約束」
白浜くんが小さく笑いながら小指を出してくる。
細くて白い、彫刻みたいな指。
とくん。
小さく心臓が鳴った。
「……うん」
私はそっと白浜くんの小指に自分の小指をからめた。
何だか心がフワフワして、すごく変な気持ち。
「じゃあ、明日のお昼休み、生徒会室に来てね」
白浜くんは指を離すと、私の耳元で低く囁いた。
「うん、分かった」
ウソみたい。
こんな簡単に白浜くんの独占取材ができるだなんて。
明日からお弁当作りがんばらなきゃ。