「五十鈴さん」

 えっ、この声って――。

 恐る恐る振り返る。

 そこに居たのは、スラリとした長身に黒髪で色白の美形。

「……白浜くん?」

 何で白夜くんがここに?

 あっけに取られている私の腕を、白浜くんはぐいっと引っ張った。

「五十鈴さん、今ちょっといい?」

 白浜くんの強引な態度に辺りがざわつく。

 そうだよね。女嫌いで有名な白浜くんが自分から女の子に声をかけるなんてなかなかない異常事態。

 周りが放っておくはずがない。

 何だろう、新聞の記事についてかな。

 何か気に触ることでも書いたっけ?

 私はチラリと横を見た。

「ごめん、沙雪ちゃん、先行ってもらっててもいいかな?」

「うん、いいけど……」

 沙雪ちゃんは信じられないって顔で固まってる。

 沙雪ちゃんだけじゃない、周りにいた生徒全員が、こちらを見て何かヒソヒソ言ってる。

 うう、やりにくいなあ。

「それじゃあ行こうか」

 私は白浜くんにうながされ、逃げるようにその場を離れた。

 周りの女の子たちの痛いほどの視線を感じながら……。