私はお鍋を火にかけ、深めのお皿に鍋物をよそった。

「はい、どうぞ」

「いただきます」

 夢中でご飯をかきこむ白浜くん。

 本当にお腹が空いてたんだなあ。

 私は恐る恐る尋ねてみた。

「白浜くんは、料理できないの?」

「料理なんて、ここに来るまで作ったことないよ」

 白浜くんが答える。

 そうなんだ。

 白浜くんって何でもできるイメージだし、てっきり料理も上手いのかと思ってた。

「……ここ、食堂ないんだね。学生寮って言うから、てっきり寮母のおばちゃんが食事も作ってくれるのかと」

 白浜くんがしみじみとため息をつく。

「ああ、数年前まではそういうのもあったらしいけど、最近は住んでる人も少ないし、学食とか売店もあるからやめたみたい」

 それにここの寮母さん、あんまり料理得意じゃないみたいだし。

「そっか。でも、困ったな。学食も売店も閉まるの早いし、生徒会の仕事があると行けないことも多いんだよね。昼も忙しいし」

 白浜くんが嘆く。

 そっか。それじゃあご飯を食べるのも大変だなあ。

 それにしても――。

 私は白浜くんの顔をチラリと見た。

 「女嫌い」とか「ツンドラの白浜」だなんて聞いてたけど……。

 こうして話してみると、白浜くんって意外と普通の人……かも?

「ごちそうさま。また明日、学校でね」

 ご飯を食べ終え、大量のタッパーを抱えた白浜くんを見送る。

「うん、おやすみ」

 と、そこで私は気づいた。

 しまった。取材をさせてくれって言えばよかった。

 ……ま、いっか。

 隣の部屋になったんだし、これからいくらでもチャンスはあるよね。