そういえば、二日ぐらい前に引っ越しのトラックが寮の前に停まってたのを思い出す。
あれ、白浜くんだったんだ。
「そうだったんだ。知ってたら挨拶に行ったのに」
「ごめんごめん。ほら……なんていうか、他の人に知られたらまずいから、寮母さんに誰にも言うなって口止めしてたんだ」
「そうだったんだ」
そうだよね。よく考えたら白浜くんって生徒会長になる前から美形で有名だった。
そのころからファンも多かったのに、さらに今は生徒会長になったせいでもっと有名になっちゃったから、他の人に知られたらファンとか野次馬の人とかが押しかけてきて大変かも。
私は冷蔵庫の中に入っていたお鍋を開けた。
これもたくさん余ってるし、せっかくだから白浜くんに食べてもらおうっと。
「白浜くん、鍋物もいる?」
「いる」
即答する白浜くん。
「でも汁物だとこぼれちゃうかな。どれに入れよう」
私が棚を漁って容器を探していると、白浜くんはしれっとした顔でこう言った。
「あのさ、それ、ここで食べていっていい?」
えっ。
「うん、まあ、それはいいんだけど」
白浜くんがうちでご飯を食べるだなんて、なんだか現実じゃないみたい。
夢でも見てるのかな?