「どうぞどうぞ。大した料理は無いけど、持って帰っていいから」

 私は作り置きしていた焼き魚や煮物、きんぴらごぼうを冷蔵庫から出した。

 白浜くんは目を子供みたいにキラキラと輝かせる。

「うわ、すごい。これ、自分で作ったの?」

「うん。でも別に大したことないよ。煮物なんて炒めて煮るだけだし、魚も焼くだけだし」

「それでもすごいって。だってこんな狭い台所なのにどうやって料理するの」

 タッパーに入った料理を前に身を乗り出す白浜くん。

 確かに、超極小サイズの台所にはコンロが一つしかないし、流しも狭い。

 でもうちの実家も台所は狭かったし、慣れている。

「狭いけど、料理くらいはできるよ。しいて言えばもう一つくらいコンロがほしいけど……」

 私はそっけなく答えた。

 お父さんが亡くなってからお母さんは仕事でずっと忙しいし、料理はずっと自分でしてきた。
 
 こんなの大したことないんだけどな。

 お弁当だって毎日自分で作ってるしね。

「それより白浜くん、何でうちの前で倒れてたの?」

「ああ、実は俺、最近この部屋の隣に引っ越してきたんだ」

 あっけらかんとした顔で答える白浜くん。

「えっ」

 白浜くんが隣の部屋?