「――バカ」 私は小さくつぶやいた。 誕生日プレゼントなんていらなかった。 ただ君がそばにいてくれればそれでよかった。 だけど、私の腕でコチコチと時を刻み続ける時計を見ていると、姿は見えなくても白浜くんがずっとそばにいてくれているような気がした。 「忘れないよ、白浜くん」 私は腕に巻いた時計に向かって語りかけた。 私、残していくね。 君が生きた記憶と写真を。 きっといつまでも。 この時計の針が止まって、いつか私もあの穏やかに流れる青い川を渡るその時まで。 【完】