私の言葉に白浜くんのお母さんは「ああ」と声を上げた。

「そういえばお葬式の時に会ったわね。そっか。寮の隣の部屋だったのね」

「はい。あの……これ。お二人に読んでいただきたくて」

 私は白浜くんの追悼記事を白浜くんのご両親に渡した。

「まあ、わざわざありがとう」

 感動したように頭を下げるお母さん。

「それじゃ、これで……」

 と私が自分の部屋に帰ろうとすると、お父さんは白浜くんの部屋を指さした。

「そうか。それなら今から一緒に遺品の整理をするんだけど、一緒に来るかい?」

「いいんですか?」

「ええ、もちろん」

 ご両親の許可を得て、私も部屋の中に入った。

 部屋の中は白と黒で統一されていて綺麗に片付いていたけれど、机を見るとやりかけの宿題や、お茶を飲んだまま片付けていないマグカップがあって人の気配を感じた。

 明日にでもここに白浜くんが帰って来るんじゃないか、そんな気がしてならなかった。

「まるでまだあの子が生きてるみたいね」

 ポツリとお母さんがつぶやく。

「……はい」

 私も部屋を見回して返事をした。

 全く同じ感想だった。