来上がった白浜くんの追悼記事は急いで刷られ、いつものように購買に置かれた。

 白浜くんの写真を一面にするといつも売れ行きがいいけど、この日は特にすごかった。

 いつもは学校新聞を読まないような男子生徒や先生まで、みんなが私の記事を読んでくれた。

「花、この記事すごく良かったよ」
「白浜くん、こんな面があったんだね」
「私、この記事一生取っておくね」

 そうして出来上がった新聞は評判を呼び、増刷に増刷を続けた。

 これで白浜くんのことはみんなの中に残り続けるだろう。

 きっと、永遠に。


 そして――白浜くんの追悼記事を書き、購買に並ぶのを見届けた私はというと、再び学校を休んでいた。

 全身がだるくて、熱を測ると三十八度もあった。

 ひょっとしたら知恵熱かもしれないし、白浜くんの追悼記事を書いたことでエネルギーを使い切ったからかもしれない。

 ただ単に徹夜したことで免疫力が弱ったのかもしれない。

 とにかくいつも出さないような高熱に苦しみ、ベッドで死んだように数日眠っていた私は、ふと寮の前に止まる車の音で目を覚ました。

 窓の外を見ると高そうな車が止まっていて、中からこざっぱりとした服を着た優しそうな中年男性と、美人で上品そうな中年女性が下りてきた。

 その姿には見覚えがあった。

 お葬式の会場で深々と頭を下げてお辞儀をした姿を思い出す。

 あれは白浜くんのお父さんとお母さんだ。

 私は慌ててパジャマから私服へ着替えると、白浜くんの追悼記事の載った新聞を持って部屋の外に出た。

 私が部屋から出ると、ご両親は寮母さんから受け取ったのであろう合鍵で白浜くんの部屋のドアを開けているところだった。

「あ、あのっ……」

 私は大きく息を吸い込むと、キョトンとしているご両親の前でこう言った。

「あのっ、私……白浜くんの彼女……です」

 過去形にはまだできなかった。

 したくなかった。