私が白浜くんの顔の迫力に圧倒されていると、白浜くんはぼんやりとした口調でつぶやいた。

「……あれ、俺、倒れてたの?」

「多分そう。白浜くん、こんな所でどうしたの? 具合でも悪いの?」

 私が慌てて尋ねると、白浜くんは額に手を当て答えた。

「いや……多分貧血? でも大丈夫。家に薬あるから、それ飲めば――」

 とその瞬間、大きな音が廊下に響き渡った。

 ぐうううううっ。

 ん? 

 今の音ってもしかして――。

 私が唖然としていると、白浜くんはすました顔のままお腹を押さえた。

「……腹減った」

 えっ、今のはお腹の音?

 ってことは、白浜くんはただお腹を空かせて倒れてただけなの?

 あの完璧生徒会長でツンドラ王子の白浜くんが、お腹を鳴らして床に転がってるだなんて……イメージと違いすぎる!

「あの、もしかしてお腹空いてるの?」

 恐る恐る聞いてみると、白浜くんは小さくうなずいた。

「うん。昨日からカップ麺一個しか食べてない」

「ええっ、そうなの? 他に食べるものは?」

「いや、今日は学食も購買も生徒会で忙しくて行けてなくて」

「そうだったんだ」

 私は少し考えて、こう切り出した。

「しょうがない。夕ご飯ちょっとおすそ分けしてあげようか?」

 と言ってから気づく。

 あ、そう言えば白浜くんって、他人の作った食事は受け付けないんだっけ。

 だけど白夜くんは、すごい勢いで食いついてきた。

「本当? 良かった」

 ……うう、顔が近い。

 近くで見ると、白浜くんって本当に綺麗な顔だな。

 私は平然とした顔を作り、白浜くんを部屋に案内した。

 本当は、こんな有名人を部屋に入れるだなんて、すごく緊張するんだけどね。