「……負けるもんか」

 私はすかさずカメラを構え、白浜くんの満面の笑みを捉えた。

 撮れた。白浜くんの最高の笑顔。

 いつもの王子様っぽい作り笑顔じゃない。

 いたずら好きで子供っぽくて怖がりで見栄っ張り。そしてすごく頑張り屋さんでちょっぴり嫉妬深い――そんな彼の本当の顔が撮れたような気がした。

 とここで視界がぐらりと歪んだ。

 ああ、これは夢で、私は夢から醒めるんだ。

 私はなんとなく直感した。

 私は慌てて叫んだ。ここで言いたいことを言わないと、白浜くんともう会えないかもしれないから。

「白浜くん、私、あなたのこと本当に好きだったよ! なのに……なのにこんなに早く死ぬなんて、ずっと一緒にいるって言ってたのにさ。このバカー!!」

 私の言葉に、白浜くんは少し呆れたように笑った気がした。

 全くもう、聞いてるんだか聞いてないんだか。

 私はさらに続けた。

「わたし、白浜くんのこと、これからもずっと忘れないよ。忘れたくても忘れないと思う。さようなら。さようなら、白浜くん――ずっと大好きだよ!!」

 私の言葉に、白浜くんは少し泣きそうな顔で小さくうなずくと、自分の持っているインスタントカメラを指さし、何かを喋った。

「えっ、何? 聞こえない――」

 私が聞き返すと、今度は白夜くんは大きな口を開けてゆっくりと喋った。

 その口は小さく「さようなら あいしてる」と動いたような気がした。

 私はうなずくと、大きな声で叫んだ。

「さようなら――さようなら!」

 さようなら。

 愛してるよ白浜くん、永遠に――。