私が叫ぶと、白浜くんは少し困ったように笑って、ポケットからインスタントカメラを取り出しパシャリと私を撮った。
そのいたずらっぽい笑顔を見て、私は困惑する。
「もう、こんな時に何を撮って――」
私があきれていると、白浜くんは私のほうを無言で指さした。
何を指さして……と自分の体をよく見て気づく。
白浜くんが指さしてるのは、私ではなく、私の首から下げたお父さんの一眼レフだった。
あれ? 私、いつの間にこんなものを……。
「……これで撮れってこと?」
――もう、こうなったら仕方ない。最高の一枚を撮ってやる。
私はカメラを構えた。
パシャリ、パシャリ。
何回もシャッターを切る。
だけれど全然うまく撮れなかった。
なにせ向こうもカメラを構えている。
カメラで顔の隠れたショットがほとんどだった。
「もうっ、全然うまく撮れないよ!」
これが最後の白浜くんの写真になるかもしれないのに!
私が怒っていると、パシャリと音がし、白浜くんが子供のような無邪気な顔で笑った。
どうやら良い写真が撮れたらしい。