その時、脳裏に浮かんだのは「やりたいことノート」に書かれていたあの一文だった。

 『僕は僕の存在をできるだけ多くの人に覚えておいてもらいたい』

 白浜くんが望んでいたことだ。

 私は少しの間下を向いて考えた。

 白浜くんのことをみんなに覚えておいてもらえる方法は何か。

 それこそが新聞の役割じゃないのだろうか。
 
 白浜くんのことを一番よく知っているのは――他でもない私なのだから。

 書くのはきっとつらい作業になるだろう。でも……。

 私は少し考え、部長にメッセージを送った。

 『部長、その記事は私に書かせてください』

 私だけじゃない。いろんな人に白浜くんのことを覚えていてもらうために。

 他の人には書けない、私にしか書けない記事を書こうと思う。

 それが新聞記者の役目。

 白浜くんを愛した私の役目だと思うから。

 私は、腫れた目をごしごしこすり、急いで記事の執筆にとりかかった。

 そういえば、以前、白浜くんのインタビューを載せようとしたけどお蔵入りになったものがあったっけ。

 私は以前のインタビューの内容を引っ張り出してきた。

 うん。新たに記事にできそうなだけの分量はある。あとは……。