私は空っぽの頭のまま自分の部屋に帰ると、白浜くんのお母さんから渡された「やりたいことノート」を開いてみた。

 ・彼女と一緒に観覧車に乗る
 ・彼女とクレープを食べる
 ・彼女とキスをする

 見覚えのある項目。

 以前見た時と違うのは新たに達成した項目に、赤い丸が付けられていることだ。

 几帳面に整った綺麗な丸は、まるで白浜くんの性格を示すみたいだった。

 白浜くんはどんな気持ちでこのリストを作ったのだろう。

 どんな思いで完璧な自分を作り上げ、完璧生徒会長になり、自分の納得する人生を送ろうと決めたのだろう。

 私は白浜くんの気持ちをなぞるように、丁寧に丁寧にページをめくった。

 一ページめくるごとに、白夜くんと一緒に過ごした記憶が蘇って来る。

 こんなことなら、もっと白浜くんとのデートを素直に楽しめばよかった。

 思えば病気のことを気にしすぎて最後のデートは心から楽しめていなかったようにも思える。

 もっと白浜くんと向き合えたはずなのに。素直に自分の気持ちを話せたはずなのに。

 後悔ばかりが募る。

 そうしてノートをめくり、最後のページまで来たとき、そこに鉛筆で薄く走り書きのようなメモがしてあることに気付いた。